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突然ですが、理学療法士と作業療法士の違いとはどこでしょう。
現職の理学療法士や作業療法士であれば、仕事内容や役割の違い・考え方の違いなどを明確に答えることができるはずです。
しかし、その理想的な『作業療法士とは』『理学療法士とは』を職場で実践できている人となると、少数になるかと思います。
職場によっては、理学療法士と作業療法士が同じ仕事をしていることも珍しくはなく、役割が明確に分担されていない場合も非常に多いのです。
現在、理学療法士や作業療法士として働いていない人は、ここで疑問がわくでしょう。
理学療法士と作業療法士って同じ仕事ができるの?
じゃあ何故職業が違うの?
今後、理学療法士もしくは作業療法士で悩んでいる人には特に混乱を招いてしまいますし、理学療法士と作業療法士のどちらになった方が良いのかという点についても気になることかと思います。
今回は、理学療法士と作業療法士の違いを様々な観点から探っていき、どちらがおすすめなのかという点について解説していきます。
また、執筆者は現役作業療法士として活動しているのですが、なぜ作業療法士を選択したのかという点について。
さらには、同僚の理学療法士にインタビューした理学療法士を選んだ理由についても紹介していきます。
【理学療法士と作業療法士の違い】作業療法士を選んだ理由は需要にあり
理学療法士と作業療法士の違い
理学療法士と作業療法士の違いを表にまとめてみました。
作業療法士 | 理学療法士 | |
仕事内容 | 日常生活活動動作の改善を目的に運動療法・作業療法を行う | 基本動作・身体機能の改善を目的に、運動療法・物理療法などを行う |
人数(有資格者) | 約10万人 | 約19万人 |
給料(平均年収) | 408万円 | 408万5000円 |
難易度(5年間合格率平均) | 80.24% | 84.58% |
需要 | 2042年以降に軽度の低迷予想 | 2042年以降急激な低迷予想 |
主な働く場所 | 病院(身体・発達・精神)、介護施設、放課後等デイサービス、就労継続・移行支援事業所 | 病院(主に身体)、介護施設 |
上記の表だけでは、簡単な概要程度にしか分からないと思いますので、理学療法士と作業療法士の違いについて、一つ一つ説明していきます。
理学療法士と作業療法士の仕事内容の違い
まず、理学療法士と作業療法士の仕事内容にどのような違いがあるのかという点です。
結論から言うと理学療法士と作業療法士には、役割・治療方法・考え方に違いがあります。
簡単にいうと、理学療法士は『身体のリハビリのプロ』であり、身体機能の回復や基本的な動作(立つ・歩く)などを専門とするリハビリ職です。
それに対して、作業療法士は『日常生活活動動作のプロ』です。
日常生活活動動作というのは、私たちが普段生活の中で自然に行っているトイレや入浴・更衣などの動作であり、作業療法士は日常生活活動動作の訓練を行うのが主な仕事なのです。
さらに、理学療法士と作業療法士の違いを挙げると、治療の方法も大きく異なります。
理学療法士の主な治療法は、徒手療法(治療者が手を用いて訓練する)や物理療法などが挙げられますが、作業療法士は上記のほかにも作業を用いたリハビリを行います。
作業を用いたリハビリとは、手芸や塗り絵などを用いて機能の回復を図るという方法です。
この、治療内容の特徴からか、上肢(手や指など)は作業療法士が治療し、理学療法士は下肢(足など)を担当することも少なくありません。
しかし、理学療法士と作業療法士のこのような違いがあるにも関わらず、職場によっては仕事内容が全くい同じという場合があります。
つまり、理学療法士と作業療法士には明確な違いがあるにも関わらず、同じ仕事をすることもできますし、理学療法士と作業療法士の仕事内容の境はしっかり設けられていないということなのです。
理学療法士と作業療法士の人数の違い
理学療法士と作業療法士の人数は、大きく異なります。
理学療法士の数は約19万人に対して、作業療法士の数は約10万人となっています。
(参考:PTOTSTワーカー)
全体数では、理学療法士の有資格者の方が圧倒的に多いということが分かりますね。
そして、今後の理学療法士と作業療法士の数がどのように移行していくかという予想です。
まず、理学療法士はここ数年約9000~10000人ずつ有資格者が増加しています。
作業療法士に関しては、約4000~5000人程度の増加にとどまっています。
現在の、状況から考えると今後も理学療法士と作業療法士の人数の差は開き続けることとなり、理学療法士の有資格者が多いということに変化はなさそうですね。
理学療法士と作業療法士の給料の違い
続いては、理学療法士と作業療法士の給料についてです。
結論から言うと、理学療法士と作業療法士の給料に大きな違いはなく、若干理学療法士が高いとの報告もありますが、その金額においても誤差のレベルです。
理学療法士の総数も多いため役職に配置されている理学療法士は作業療法士よりも多く、多少理学療法士の年収が上回っている可能性があります。
つまり、理学療法しか作業療法士か悩んでいる方が給料の違いを比較対象としても、それほど参考にはならないということですね。
理学療法士と作業療法士の難易度の違い
理学療法士と作業療法士はともに国家資格であり、国家試験に合格しなければなりません。
理学療法士と作業療法士の国家試験は共通科目と専門科目があり、共通科目に関しては理学療法士と作業療法士が同じ試験を受けることなります。
そのこともあり、理学療法士と作業療法士の国家試験の難易度に大きな違いはありません。
しかし、あえて言うならば作業療法士の方が難易度が高いといえるでしょう。
直近5年間の、理学療法士・作業療法士の国家試験合格率を見てみると、理学療法士は84.5%に対して作業療法士の国家試験合格率はは80.24%です。
このように若干ではありますが、作業療法士の難易度の方が高と言えます。
理学療法士・作業療法士の国家試験合格率を見てみると80%前後の方が合格しており、いかにも簡単な試験だと思われがちです。
しかし、注意が必要なのは養成校の留年率も高いということです。
そして、養成校を卒業して4年間必死に学習した中の80%が合格するということですので、決して難易度は低くありません。
私は、現在作業療法士をしていますが、大学4年時は毎日朝から晩まで学校に缶詰め状態で勉強をしなければなりませんでした。
理学療法士と作業療法士の需要の違い
理学療法士や作業療法士の需要は今後低迷するため、将来性がないと言われることが良くあります。
理学療法士と作業療法士は、知名度が上がっておりその人数も増加の一途をたどっています。
さらに、2042年をピークにリハビリの主な対象となる高齢者の数は減少していくと予測が立てられているのです。
単純に考えると、作業療法士や理学療法士の数は増加しているのに、需要は低迷していくという最悪の状況となるということですね。
さらには、人工知能(AI)の発展により、単調な訓練は理学療法士や作業療法が不要となる未来も待っているでしょう。
これらのことを考慮すると、理学療法士や作業療法士の需要は両者ともに低下すると考えられますが、実は、作業療法士の未来の方が明るいのではないかと私は考えています。
その理由は2つあります。
理学療法士より作業療法士の需要があると考えられる理由
- 精神・発達領域からの需要は今後も増加する
- 作業療法士は人工知能に置き換えづらい職業
作業療法士は理学療法士と異なり、精神領域や発達領域で働いている方も多いという特徴があります。
そして、精神障害を発症してしまう方は近年増加傾向となっているのです。今後も、精神科や発達障害領域からの需要は高まるため、高齢者からの需要が低くなったとしても、作業療法士の仕事がなくなることはないでしょう。
さらに、作業療法士は人工知能に置き換えづらい職業だと言われています。
この点についても、理学療法士より作業療法士の需要の方が高まるといえる理由となるのです。
理学療法士と作業療法士の働く場所の違い
理学療法士と作業療法士は働く場所にも違いがあります。
理学療法士の主な働く場所は、身体障害領域の病院やデイケア・老人保健施設などが主となります。
そのほかにも、発達障害に対するリハビリテーションやスポーツトレーナーとして働く人もいますが、少数であり、求人数も少数しかありません。
作業療法士の職場は、身体・精神・発達領域の病院やデイケア・老人保健施設が主な就業先となることが多いのですが、そのほかにも活躍する場所が多くあります。
例えば、障害者の社会復帰を支援する就労移行支援事業所や継続支援事業所、そして、放課後等デイサービスなどの職場も近年は増加傾向にあります。
理学療法士と作業療法士の働く場所の大きな違いは、身体障害領域以外の職場の数です。
精神障害や発達障害にも興味があるという方に関しては、作業療法士の方が向いており、身体のプロになりたいという方は理学療法士に向いているといえるでしょう。
なぜ理学療法士を選んだのか聞いてみた
私が現在作業療法士として働いている職場で、ともに働いている理学療法士に『なぜ理学療法士を選んだのか』という理由を聞いてみました。
多かった理由を順番に紹介していきます。
理学療法士を選んだ理由:国家資格を取れば社会的に強いと思った
最も多かった理由は、何となく国家資格を取っとけば有利だと思ったからという回答です。
この理由で口をそろえて言った言葉は「なんとなく」であり、深く考えたうえで理学療法士になったわけではないということが伺えます。
そもそも、理学療法士という職業は2000年ごろから知名度を高めていき、現在は多くの方が知っている職業なのではないのでしょうか。
知名度が高くなったことによって、なんとなく国家資格で良い仕事だから理学療法士をやろうという方が増加してきたと考えられます。
理学療法士を選んだ理由:理学療法士のリハビリを受けたことがある
この理由は、理学療法士になる理由として挙げられることが非常に多いですよね。
面接などでも、理学療法士になった理由で、スポーツでけがをした際に理学療法士にお世話になったと回答した人を何人も知っています。
実際に、理学療法士のリハビリを受けてみて理学療法士にあこがれを抱く人も少なくないようです。
理学療法士を選んだ理由:身体に興味がある
理学療法士は筋トレに励む人やスポーツに力を入れている方が非常に多いです。
というのも、理学療法士になった理由の一つに筋肉や身体の動作など身体機能に興味がある人が多いからです。
身体に関することを仕事にしようと考えた時に、最初に浮かんだのがスポーツトレーナーや理学療法士であり、理学療法士を目指すことになったということでした。
理学療法士を選んだ理由:養成校が近くにあった
私の職場の理学療法士では、養成校がちょうど近くにできたから興味を持ったという理由も聞かれました。
理学療法士の養成校は少しづつ増加してきていますし、理学療法士になることも難しいことではなくなってきました。
自身の実家から、養成校に通って理学療法士になれるという点も理学療法士になることに前向きとなる理由の一つとなるようです。
理学療法士はなぜ作業療法士を選ばなかったのか
理学療法士になった理由のほかにも、『なぜ作業療法士を選択しなかったのか』という質問を投げかけてみました。
最も多かったのは、作業療法士についてあまり知らなかったという回答です。
私の職場では、30代の理学療法士が多く、現在よりも知名度の低い作業療法士について知らなかったということもあるようですね。
また、現在でも理学療法士の方が知名度が高く、作業療法士の2倍近い理学療法士が毎年増加している状態です。
その他の、作業療法士を選ばなかった理由としては、精神障害や発達障害に対応できる自信がなかったという意見や、身体機能が好きだから。理学療法士の方が魅かれたからという意見が挙げられました。
作業療法士を選択した理由
私が、作業療法士を選択した理由は3つあります。
作業療法士を選択した理由:家族に勧められたから
作業療法士として働いている現在であれば、作業療法士の魅力を込めていくつか理由を述べることができるかと思うのですが、作業療法士の道に進むことを決めた当時は高校生です。
特に、なりたい職業もなくスポーツ科に進もうかと考えていました。
その際に、勧められたのが理学療法士です。
最初は、作業療法士ではなく理学療法士を知ったことがきっかけだったのです。
そのきっかけによって向かった養成校のオープンキャンパスにて、作業療法士について知り、作業療法士を目指すこととなりました。
作業療法士を選択した理由:精神障害にも関わることができるから
きっかけは、家族に勧められたからですが、作業療法士を選択したもっとも大きな理由は、精神障害にも対応できる職業だからです。
私自身、精神障害に興味があったため理学療法士よりも作業療法士が良いと考えて、作業療法士を選択したということです。
作業療法士を選択した理由:理学療法士よりも飽和状態ではないと知ったから
作業療法士は理学療法士と比較すると、現在も人数が少なく今後も増加率が少ないことが予測されます。
私が、作業療法士を検討していた当初から理学療法士の人数は多く、養成校の教授から理学療法士は溢れてきているとの説明を受けました。
もちろん、今後は作業療法士の数も増加してくるため供給過多となることもあるかとは思うのですが、少しでも、就職難となる可能性を考慮して作業療法士を選択しました。
ただ、現在のところ理学療法士・作業療法士ともに供給過多とはなっておらず、就職が難しいという状況は訪れてはいません。
理学療法士と作業療法士はどっちが良い?
ここまで、理学療法士と作業療法士の違いを説明しました。
結局、理学療法士と作業療法士はどっちが良いのかという話なのですが、正直これは好みの問題かと思います。
身体について興味があり、身体のリハビリのプロになりたいのか。
それとも、手芸や作業活動などを通してリハビリを行い、日常生活のリハビリを行いたいと感じるのか。そして、精神障害や発達障害に対するリハビリテーションを行いたいのかということです。
しかし、それでも悩んでしまうという方には、作業療法士をおススメします。
理由としては、働ける領域も幅広く、身体障障害に対するリハビリを極めたいと考えるのであれば、理学療法士と同様の仕事をすることも可能だからです。
しかし、理学療法士が精神科に勤めて精神障害に対するリハビリテーションを行うというケースは私の知る限りありません。
上記のことから、理学療法士と作業療法士で悩んだ場合は作業療法士をおすすめするということです。
ただし、これは作業療法士である私個人の意見ということを忘れずに、よく考えて職業選択をするようにしましょう。