理学療法士の残業代(残業手当)が出ないのは違法?勉強会・記録の時間の扱いと対処法【現役OT】

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「記録を書いていたら毎日1時間の残業。なのに残業代は出ない」「勉強会は自主参加だから残業じゃないと言われた」。理学療法士の残業代(残業手当)について、こうした声は今も少なくありません。

私は急性期で働きながら、障害のある方の就労支援にも関わっている現役の作業療法士です。1年目のころは「自己研鑽」という名目の残業が続き、本気で辞めようと思ったことがあります。当時の私に知っておいてほしかったのが、どんな時間が「労働時間」になるのかという国のルールです。

この記事では、統計で見る理学療法士の残業時間と残業代、残業代が出ない職場で何が起きているのか、そして自分を守るためにできることを、法律と公的な資料をもとに整理します。

OT
この記事を書いた人:だぶ
現役の作業療法士。急性期病院で働きながら、障害のある方の就労支援にも関わっています。リハビリ職の働き方・給料・転職について、現場の目線で発信しています。

この記事の結論

  • 統計上の残業は月5時間、残業代は月平均約1.2万円。ただし記録されない残業は数字に入らない
  • 残業をさせたら割増賃金を払うのは、労働基準法で決められた事業所の義務
  • 業務上参加が義務づけられた勉強会や、指示された学習の時間は、厚生労働省のガイドラインで労働時間とされている
  • まずは自分で働いた時間を記録し、職場・相談窓口・転職の順に考える


統計で見る理学療法士の残業時間と残業代

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」では、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士の1か月の超過実労働時間(残業)は平均5時間でした。毎月の給与から計算すると、残業代など(超過労働給与額)は月平均約1.2万円です。

リハビリ職の1か月の残業代(企業規模別):全体約11.7千円、1,000人以上約18.3千円、100〜999人約9.0千円、10〜99人約10.9千円(令和7年賃金構造基本統計調査)

企業規模別に見ると、1,000人以上の大きな事業所では残業が月8時間、残業代が月約1.8万円と、ほかより多くなっています。大きな病院ほど、記録・カンファレンス・委員会などが多いことが背景にあると考えられます。

ただし、この数字は事業所が残業として記録し、支払った分です。定時後に書いたカルテや、「自主参加」とされた勉強会の時間は入っていません。「統計では5時間なのに、実感はもっと多い」と感じる人が多いのは、このためです。

理学療法士に残業が生まれる理由

1. 単位を取ると記録の時間が残らない

疾患別リハビリテーションでは、療法士1人あたり1日18単位(1単位20分)が標準の目安で、1日24単位・週108単位までとされています。18単位ならリハビリだけで6時間です。患者さんの間の移動、申し送り、カルテ、計画書、カンファレンスを足すと、勤務時間内に収まらない日が出てきます。

2. 実習生や新人の指導

臨床実習の受け入れや新人の指導は、自分の担当患者さんの業務に上乗せされます。指導の時間が勤務時間内に確保されていない職場では、そのまま残業になりがちです。

3. 時間外の勉強会・症例発表

定時後の院内勉強会や、症例発表の準備を「自己研鑽」として扱う職場は少なくありません。私自身、1年目に強く負担に感じたのがこの時間でした。

残業代が出ないのは違法?知っておきたいルール

残業には割増賃金を払う義務がある

労働基準法第37条により、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせた場合、事業所は通常の賃金の25%以上を上乗せした割増賃金を払わなければなりません。月60時間を超える部分は50%以上です。22時から5時までの深夜は25%以上、法定休日の労働は35%以上の割増になります。

また、法定労働時間を超えて働かせるには、労使で「36(さぶろく)協定」を結んで届け出る必要があり、残業の上限は原則として月45時間・年360時間です(厚生労働省「労働時間・休日」)。

勉強会や記録の時間は「労働時間」になる?

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、次のような時間は労働時間として扱わなければならないとしています。

  • 使用者の指示で行う、業務に必要な準備や後片付けの時間
  • すぐに業務に入ることを求められて待機している時間
  • 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の時間や、使用者の指示により業務に必要な学習などを行っていた時間

さらに、労働時間に当たるかどうかは、就業規則などの書き方ではなく、実際に義務づけられていたか、そうせざるを得なかったかで客観的に決まるとされています。「自主参加」と言われていても、参加しないと評価が下がる、上司から参加を求められるといった状況なら、労働時間に当たる可能性があります。

終わらなかったカルテや計画書を定時後に書く時間も、業務そのものです。上司が残っていることを知りながら黙認している場合も、「黙示の指示」として労働時間に当たると考えられます。

労働時間になる時間(義務づけられた勉強会、指示された学習、定時後の記録、指示された準備や後片付け)とならない時間

固定残業代(みなし残業)に注意

求人票に「固定残業手当」「みなし残業代」とある場合は、何時間分の残業代が給与に含まれているかを確認しましょう。決められた時間を超えて働いた分は、別に支払われる必要があります。

残業代が出ないときにできること

  1. 働いた時間を自分で記録する:出勤・退勤の時刻、定時後にしていた業務(記録・勉強会など)をメモやアプリで毎日残します。電子カルテの記載時刻も、働いていた証拠になります
  2. 就業規則と36協定を確認する:残業の申請方法、勉強会の扱いを確認します。就業規則は、職員が見られるようにしておくことが事業所に義務づけられています
  3. 上司や人事に相談する:「記録の時間を勤務時間内に取れないか」「勉強会を時間内にできないか」など、仕組みの改善として相談すると話が進みやすくなります
  4. 外の窓口に相談する:職場で解決しないときは、各地の労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます(厚生労働省「確かめよう労働条件」)。未払いの賃金を請求できる期間は、2020年4月以降に支払日が来た賃金について3年です
  5. 職場を変える:残業が当たり前になっている職場の仕組みは、一人ではなかなか変えられません。残業代がきちんと出る職場、記録の時間が確保されている職場に移るのも現実的な選択肢です

残業が少ない職場の見分け方

  • 求人票:残業の平均時間が具体的に書かれているか、固定残業代の有無と時間数、年間休日
  • 見学・面接:1日の平均単位数、記録の時間をどこで取っているか、勉強会は時間内か、定時に帰る人がどのくらいいるか
  • 第三者の情報:転職エージェントの担当者は、求人票に書かれない残業の実態を職場に確認してくれることがあります

楽でホワイトな職場の特徴は理学療法士の楽な職場の記事で、8つのチェック項目とあわせて詳しくまとめています。

すぐに転職するつもりがなくても、「残業代がきちんと出る職場が近くにどのくらいあるか」を知っておくだけで、今の職場を客観的に見られるようになります。リハビリ職専門の転職エージェントの違いはPTOTSTワーカーとPTOT人材バンクの比較でまとめています。

残業時間の上限:36協定と特別条項

会社が従業員に残業をさせるには、労働者の代表と「36(サブロク)協定」を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。36協定を結んでも、残業時間には上限があります。

  • 原則の上限:月45時間・年360時間
  • 特別な事情があり、特別条項を結んだ場合でも:年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均がすべて月80時間以内。月45時間を超えられるのは年6か月まで

リハビリ職の統計上の残業時間は月5時間程度ですが、これは職場が残業として記録した時間です。記録されない残業が多い職場では、実際の働き方とのずれが大きくなっている可能性があります。

上司に残業の扱いを相談するときの伝え方

残業代が出ていない時間があっても、いきなり強い言い方で伝えると、関係がこじれることがあります。まずは「確認したい」という形で相談するのがおすすめです。

「定時のあとに書いている記録の時間について、確認させてください。毎日30分ほどかかっているのですが、残業として申請してよいものでしょうか。申請の方法を教えていただけると助かります。」

ポイントは、責めるのではなく、事実(どのくらいの時間、何をしているか)と、どうすればよいかの質問を伝えることです。勉強会についても同じように、「参加は義務ですか。義務の場合、勤務時間として扱われますか」と確認できます。

相談しても改善されない場合や、申請しにくい雰囲気がある場合は、働いた時間の記録を残したうえで、労働基準監督署などの相談窓口を利用することも考えましょう。

「管理職だから残業代は出ない」は本当?

主任や係長などの役職がつくと「管理職だから残業代は出ない」と言われることがあります。労働基準法で残業代の対象外になる「管理監督者」は、経営者と一体的な立場で、出退勤の時間を自分で決められ、地位にふさわしい待遇を受けている人に限られます。役職名がついているだけで、実際には一般の職員と同じように働いている場合は、管理監督者にあたらないことがあります。

また、管理監督者であっても、深夜(午後10時〜午前5時)の割増賃金は支払う必要があります。役職がついてから残業代がなくなった人は、自分の働き方が本当に管理監督者にあたるのかを確認してみましょう。

働いた時間の記録のつけ方

残業代について相談したり請求したりするときに、いちばん大切なのは記録です。毎日、次のことを手帳やスマホのメモに残しておきましょう。

  • 出勤した時刻と、実際に仕事を終えた時刻
  • 定時のあとにしていた仕事の内容(記録、書類、勉強会、準備など)
  • 上司から指示があった場合は、その内容と日時

タイムカードと実際の終業時刻がずれている場合は、そのずれがわかるように書いておくことが大切です。

よくある質問

残業代を請求できるのはいつまでですか?

未払いの残業代などの賃金を請求できる期間(時効)は、現在は3年です。過去の分を請求したい場合は、早めに働いた時間の記録を集め、労働基準監督署や専門家に相談しましょう。

固定残業代(みなし残業)があれば、いくら残業しても追加の支払いはありませんか?

いいえ。固定残業代に含まれる時間を超えて残業した場合、超えた分の残業代は追加で支払われる必要があります。求人票や雇用契約書で、固定残業代が何時間分なのかを確認しておきましょう。

早出の準備や、昼休みに対応した時間も残業になりますか?

始業前の準備や、休憩時間中の対応が、上司の指示や業務上の必要によるものであれば、労働時間にあたる可能性があります。休憩が取れなかった日は、時間と理由を記録しておきましょう。

理学療法士の残業代は平均でいくらですか?

令和7年賃金構造基本統計調査から計算すると、理学療法士・作業療法士などの残業代(超過労働給与額)は月平均約1.2万円です。ただし、記録されない残業は含まれていません。

勉強会に残業代は出ますか?

参加が業務上義務づけられている勉強会は、厚生労働省のガイドラインで労働時間とされており、時間外に行われれば残業代の対象になります。本当に自由参加で、参加しなくても不利益がないものは労働時間に当たりません。

残業代が出ない職場を辞めるのは逃げですか?

逃げではありません。働いた分の賃金を受け取るのは労働者の当然の権利です。体や生活を守るために職場を選び直すのは、長く働き続けるための前向きな判断です。

まとめ

理学療法士の残業は、統計上は月5時間・残業代は月約1.2万円ですが、記録されない残業はこの数字に入っていません。業務上義務づけられた勉強会や、定時後に書く記録の時間は、労働時間に当たる可能性があります。

まずは働いた時間を記録し、職場への相談、外の窓口、職場を変えるという順に考えてみてください。

残業や残業代の悩みは、一人で抱え込むほど言い出しにくくなります。まずは自分の働いた時間を知り、ルールを知ることが、自分の働き方を守る第一歩です。職場に相談しても変わらないなら、働き方を大切にしている職場へ移ることも、前向きな選択肢の一つです。

記録の時間や勉強会の扱いは、職場によって本当にさまざまです。転職を考えるときは、求人票の「残業少なめ」という言葉だけでなく、実際の働き方を必ず確かめましょう。

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